株式会社 ワークマン

「相見積かけて一番安い運送会社を選ぶ」──見せかけのコスト削減策を「意味がない」と一刀両断するワークマンが、トラック予約受付システム『トラック簿』にかける期待


 「例えば、3社の運送会社で相見積を取り、『どの運送会社が一番安いのか?』、そんなコスト削減を行っても意味がないです」──役員待遇 ロジスティクス部 部長 大竹宏孝氏は断言する。

 ご承知のとおり、今やワークマンは飛ぶ鳥を落とす勢いで躍進を続けている。作業服はもちろん、最近ではプライベートブランドのアウトドアウェアやスポーツウェアも人気を集め、2019年3月に立ち上げた『WORKMAN Plus』、2021年に立ち上げた『#ワークマン女子』も絶好調。出店については、2022年3月末:944店舗から、2023年3月末1500店へと大幅な拡大を計画している。

 一方でトラックドライバーや倉庫作業員に限らず、今後ありとあらゆる産業において、人手不足は拡大し、深刻化していく。だからこそ、ワークマンの拡大戦略は将来の人手不足を見込んだ上で実現されなければならない。
 「人は集まらない。でも物量は増え続ける」、このギャップを埋めるためには、トラック予約受付システム『トラック簿』のような、省人化と生産性向上を両立する仕組みが必要なのだ。

 「運送会社など、当社の事業遂行に協力してくれている協力会社とともに、どうやったら生き残っていけるのかを真剣に考えていかなければなりません。もちろん、生き残るためには、協力会社従業員の給与をアップしていく必要があるでしょう」と大竹氏は語る。
 相見積を取ってコスト軽減を図るようなやり方では、協力会社とともにWin-Winの関係を構築することはできない。

 少子高齢化が進み、人手不足が加速していく日本社会において、どのように事業を拡大していくのか?
 ワークマンの取り組みとともに、トラック予約受付システム『トラック簿』がワークマンの取り組みにどのように貢献しているのか、ご紹介しよう。

「8年後には出荷量が2倍に」──躍進を続けるワークマンならではの課題とは

役員待遇 ロジスティクス部 部長 大竹宏孝氏

役員待遇 ロジスティクス部 部長 大竹宏孝氏

 ワークマンの躍進は、皆さまもご存知のとおりである。
 1982年創業、作業着専門店だった同社は、低価格でありながら高い機能性を備えたプライベートブランド商品を次々と展開し、職人やトラックドライバーのようなブルーワーカーから、一般消費者へとターゲットを拡大していった。

 近年立ち上げた新業態『WORKMAN Plus』、『#ワークマン女子』も新たな顧客獲得に一役を買った。特に『#ワークマン女子』は、若い女性たちの心をとらえ、今やユニクロやしまむらなどと並ぶ、ファストファッションのアイコンとしてのポジションを獲得、2018年3月期 560億8300万円だった同社の営業総収入は、2023年3月期 1241億1000万円へと大幅アップを見込んでいる。

 同社の低価格戦略について、大竹氏は、「ワークマンの商品が安いのは、利益率が低いからです」と説明する。
 比較すると、2022年3月期におけるユニクロの売上原価率 47.6%に対し、同社の売上原価率は60.4%であり、大竹氏の言葉を裏付けている。

 「そのため、少しのコストアップでも、当社の低価格戦略に支障をきたしかねません。しかし、人手不足による人件費高騰は日本社会全体の問題であり、当社も避けようがありません」(大竹氏)

 躍進を続けるワークマンにとって、人件費高騰はとても頭の痛い課題である。
 例えば、今回取材をした伊勢崎流通センター(群馬県伊勢崎市)の出荷量は、8年後には現在の2倍になることが予想されている。現在、伊勢崎流通センターでは約400名が働いているから、出荷量が2倍となる8年後には、単純計算で約800名の人員が必要になる。

 「これは非現実的な数字です。というのも、伊勢崎市および周辺の労働人口を分析すると、伊勢崎流通センターで雇用可能なのは最大でも約700名という試算があるからです。
 さらに言えば、10年後には伊勢崎エリアの労働人口が60%まで減るという試算もあります。
 当社としては、10年後と言わず、15年後の社会状況も見据えた上で、今から対策を打たなければなりません」(大竹氏)

 そのために求められるものは何か?

 大竹氏は、「『人がやるべきことと、そうではないこと』を見極め、業務の簡素化を図る必要がある」と説明する。


「声のする方に、進化する。」、ワークマンがトラックドライバーとの対話を続ける理由

 ワークマンでは、次期ロジスティクス構想プロジェクトチームとKPIプロジェクトチームを立ち上げた。次期ロジスティクス構想プロジェクトチームは週一、KPIプロジェクトチームは月一で活動している。ふたつのプロジェクトは、車の両輪のように、相互に作用して業務の簡素化を図るべく、業務設計の見直しに取り組んでいる。

 その一環として同社が取り組み始めたのが、月に一回、協力会社のトラックドライバーに集まってもらい、現場の声を直接ヒアリングするドライバー会議である。

商品輸送を担っている運送会社には、現在進行する物価高にも負けないよう、きちんと利益を上げてもらわなければならないし、その恩恵はトラックドライバーにも還元されなければならない。
 だからこそ大竹氏は、「相見積を取ってコスト軽減を図るようなやり方では、協力会社とともにWin-Winの関係を構築することはできない」と断言するのだ。
 ただし、同社の低価格戦略を継続するためにはコストアップはできない。だから、より効率的な運送を実現するために業務の簡素化を図らなければならない。

 もちろん、ドライバー会議では、ドライバーから厳しい指摘を受けることもある。

 例えば、「ワークマンは、コンテナの偏荷重についてよく分かっていないんじゃないですか?」というドレージ担当ドライバーからの声は、同社にとっては貴重な学びのきっかけとなった。コンテナ内貨物の偏積は、交通事故にもつながりかねない大事である。だが、衣類を中心に取り扱っていた同社にとって、それまでコンテナにおける偏荷重は問題にならなかった。キャンプ用品・アウトドア用品を商品ラインナップに加えてから、偏積の問題が発生するようになったのだ。

 「声のする方に、進化する。」──これは同社の企業理念である。これを実践し続けたから、同社は進化と改善を重ね続けた。たとえ厳しい声が挙がろうとも、ドライバー会議は同社の進化に必要なのだ。

 そして同社が注目したのが、「物流の2024年問題」でも指摘される、待機時間と荷役時間の削減である。

ノートでの受付というアナログ方式の限界

 トラック予約受付システム『トラック簿』導入以前、ワークマン伊勢崎流通センターにおけるトラックドライバーの受付は、紙のノートで行われていた。センターに着車したドライバーは、受付ノートに記名し、待機していたのだ。

 順番が来ると、流通センター担当者は、構内のどこかにいるドライバーを探し、構内を走り回っていた。広い敷地を持つ流通センターである。担当者の負担も大きい。
 一方で、接車バースが空いているのに、そのことに担当者が気が付かないケースもあった。ノートによるアナログな受付管理が、効率化を阻み、またドライバーの待機時間を長くしてしまっていたのだ。

 課題はこれだけではない。

 「アナログな管理では、どれくらいの待機が発生しているのか、その実態を把握することが困難でした」──ロジスティクス部 在庫コントローラーグループ チーフ 渡邊譲氏は、振り返る。

 待機時間はもちろんだが、何台のトラックをいつ受付したのか、そういった全容を把握するためには、元となるデータの存在が不可欠である。だが、データは電子化されておらず、ノートに記載された情報がすべてだった。
 現状把握のためには、ノートに記載された内容をExcelなどに書き起こす手間をかける必要があった。しかしドライバーの中には、文字が判読不可能なケースや、あるいはそもそも受付ノートに記載することを忘れているケースもあった。

 ノートでのアナログな受付方法は、現状分析を行うにも手間がかかる上、その正確性も十分ではないという課題があったのだ。


トラック予約受付システム『トラック簿』によって、適正な運賃を維持する効果も

 そこで、ワークマン伊勢崎流通センターでは、トラック予約受付システム『トラック簿』を導入した。ノートを廃止し、トラックの受付と、接車バースの運用管理をデジタル化したのだ。

伊勢崎流通センターに到着したドライバーは、事務所脇にあるタブレットで受付を行う。

ドライバーが携帯電話番号等の必要事項を入力すると...

受付担当者が受付状況を確認。全体の進捗を確認しながら、順番が来たらドライバーを呼び出す。

 ワークマン伊勢崎流通センターでは午前8時からトラックの受付を開始する。

 先に述べたとおり、ノートで受付をしていた頃は、待機時間などの正確なデータが取得できないため、『トラック簿』導入前後の定量的な効果比較をするのは難しい。

 「とは言え、以前は午後までずれこんでいた待機車両が、現在では午前中には解消するようになりました」(渡邊氏)

 以前と比べ、現在のほうが物量は増えている。したがって、入荷検品にかかる総時間も増加している。しかし、トラック予約受付システム『トラック簿』導入によって、効率の良いスケジューリングができるようになったことで、待機時間が削減できたのだ。

 流通センター担当者の負担も大幅に減った。
 以前は次のトラックを探して構内を走り回っていたのが、現在では管理画面からドライバーの携帯に呼び出しをかけられるようになったからである。

 「他荷主の貨物も抱えている混載便トラックに対しても、待機時間削減効果は大きかったと考えています。
 伊勢崎流通センターで待機時間が長くなると、他の荷主に迷惑がかかり、輸送効率が下がります。こういった迷惑をかける心配が少なくなったことに加え、適正な運賃を維持継続する効果が高いですから」と大竹氏は考えている。

目指すは、「人は眠っても、流通センターは24時間稼働すること」

 トラック予約受付システム『トラック簿』の導入によって、ワークマンが得た効果はこれだけではない。同社では、岡山県内において新たな流通センターの竣工を予定しているが、このような物流センターや倉庫の新規竣工を計画する際に、『トラック簿』から得られたデータがモノを言うのだ。

 新規物流センターの計画立案において、「どれくらいの物量を取り扱うのか?」「その計画物量を輸送するためには、入庫・出庫それぞれ日々何台のトラックが必要なのか?」といった計画値は必須である。こういったデータがないと、精度の高い物流センターの設計が成り立たず、また周辺道路・周辺地域への影響についてもシミュレーションできない。また、地域住民への説明も難しくなってしまう。

 『トラック簿』を導入したことにより、既存の物流センターにおけるトラックの入出庫や待機時間などのデータを、正確かつリアルタイムに取得できるようになった。結果、新規物流センターに対するシミュレーションの精度も高くなったのだ。

 『トラック簿』導入による期待は他にもある。
 今後、伊勢崎流通センターは、取り扱い物量の増加によって増床する可能性がある。もしノートによる受付を継続していたとしたら、受付および担当者の数を、増床に応じて増やさねばならない。しかし『トラック簿』があれば、ロケーションに左右されず、一か所で受付業務を遂行することが可能だ。

 「さらに理想を言えば、当社は『人は眠っても、流通センターは24時間稼働すること』を目指したいと考えています。

 そのためには、受付も人の手を介さずにできるようにしなければなりません。『トラック簿』導入は、そのための一歩なのです」と大竹氏は将来への展望を語る。

 「そうなれば、『トラック簿』をWMSやWCS※、あるいは庫内で稼働するマテハンと連携させることも考えていく必要があるでしょうね」(大竹氏)

 ワークマンが求める「省人化と生産性向上を両立する仕組み」は、まだ始まったばかりなのだ。

※WMSは、「Warehouse Management System」の略で、倉庫管理システムのこと。
 WCSは、「Warehouse Control System」の略で、倉庫制御システムのこと。

インタビューに答えていただいたロジスティクス部 在庫コントローラーグループ チーフ 渡邊譲氏(左)と役員待遇 ロジスティクス部 部長 大竹宏孝氏(右)。背後にある伊勢崎流通センターのモニュメントの右端が地面に刺さっているのは、「ワークマン発祥の地である群馬県伊勢崎市に根付いて事業を行っていく」という想いをデザインしたものだという。


物流ビジネスを攻めに転じる、トラック予約受付システム『トラック簿』の可能性

 物流ビジネスは大きな転換期にある。

 物流ビジネスの将来像を描くことを目的としている「第3回 持続可能な物流の実現に向けた検討会」(2022年11月11日開催、経済産業省、国土交通省、農林水産省)では、「物流の2024年問題」解決のための試算として、具体的な荷待ち時間・荷役時間の削減時間が示された。(上図参照)

 「物流の2024年問題」の解決策として、具体的な荷待ち時間・荷役時間の削減と、その具体的な数値目標が示されたのは大きな進展であり喜ばしい。
 だが、これはあくまで「現在の物流を維持するための参考値」であって、ワークマンのような事業拡大を望む荷主のニーズを満たすものではないことには注意すべきである。

 物流センターにおける接車バースの予約・運用・管理を担うトラック予約受付システムが、荷待ち時間削減に効果を発揮することは、本稿に拠らず、よく知られている。「物流の2024年問題」のような物流クライシスに対する「守りの対抗手段」としてのトラック受付システムの価値は、確かにそのとおりだろう。

 だがワークマンにおける『トラック簿』の活用は、人手不足と物流コスト削減を実現しつつ、物量の増加にも対応するという、言わば「攻めのための武器」としての側面も持つ。この発想はユニークだが、物流クライシスをビジネスチャンスと捉える企業にとっては、学びとなるはずだ。

 今後、ワークマンの躍進とともに、トラック予約受付システム『トラック簿』がどのような進化を遂げていくのか、注視してほしい。



※参考:"快進撃のワークマン、ユニクロ超えの利益率の秘密は「人件費率」。身軽な財務体質をどう実現したのか"

https://www.businessinsider.jp/post-263677

(物流ジャーナリスト 坂田良平)

 

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